第4章
石炭酸の鼻を突く臭いが、空気中に重く垂れ込めていた。私は春田須賀という名の、痩せこけた工場労働者を注意深く診察していた。彼の右腕は、血の滲んだ包帯で巻かれている。
「春田さん、どうか落ち着いてください」
私は彼の明らかな不安に気づき、穏やかに言った。
「傷をきちんと見せていただきませんと」
汚れた包帯を解いていくと、感染の全貌が明らかになった。工場の機械が原因であることは明白な深い裂傷はひどく化膿し、傷口の縁は炎症を起こして膿が滲み出ていた。
「ああ……」
春田須賀は息を呑んだ。
「先生、もう駄目なんでしょうか?」
「大丈夫です」
私は滅菌された器具に手を伸ばし、...
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