第189話

真水の匂いと野草の香りを運んでくる、湿り気を帯びた夏の空気は、いつだって私のお気に入りだった。私が足繁く通うこの黄金色の草原では、その香りがひときわ強く感じられる。持参した分厚いキルトの上に座っていても、足の下にある草の感触が恋しくなるほどだ。私はバッグの中を探り、お気に入りのパン屋で買ったチェリーアーモンドのクロワッサンを取り出した。その店は今、スカーレットという元気な女の子が切り盛りしていて、彼女の試作するパンはどれも素晴らしい出来栄えなのだ。

ここはかつて秘密の場所だったけれど、子供たちが笑い声を上げながら遊ぶ姿を見ていると、彼らに教えてしまったことを後悔なんてできなかった。ここには、...

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