第264話

ダリア視点

彼が乾杯のためにグラスを掲げた瞬間、私の中で何かが変わった。あの堂々として自信に満ちたアルファの声が、適切な言葉を探して震えているのを聞いたとき、胸を貫かれるような衝撃が走ったのだ。それは単に「愛おしい」というだけではなかった。自分でも守っているとは気づかなかった何かが、音を立てて崩れ去った。心が溶け出し、それと共に抑えきれない思慕の波が押し寄せた。

すべてが一度に私を襲った。ほんの一瞬前まで、私はただ息を呑むような景色に見とれていただけだった――眼下に広がる銀色の湖面は鏡のように静まり返り、木々や雪化粧した山々、そして上空に浮かぶ柔らかな羽毛のような雲を完璧に映し出していた。...

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