第296話

ダリア視点

眠りと覚醒の狭間を漂っていた――手足は重く、頭には靄がかかっていたが、何かが私の意識を引っ張り上げた。目を開けなくとも、彼がそこにいることはわかった。彼が私を見つめているのを感じる。あの香り――シナモンを添えた濃厚なコーヒーのような香りが、記憶のように私を包み込んでいた。ローガンだ。

ゆっくりと瞼を開け、彼の瞳と視線を合わせた。その眼差しには重みがあり、息を呑むほど強烈な光を宿して暗く沈んでいる。表情は読み取れず、唇は固く引き結ばれ、顎には力が入っていた。こんな彼を見たのは初めてだった。これは私の知るローガンではない。その見知らぬ一面に、私は興奮と恐怖を同時に感じて震えた。

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