第363話

フィニアン視点

一晩中この部屋に閉じ込められていたが、人っ子一人として姿を見せなかった。ブラッドムーンのアルファたちは、俺がここにいることを知っているはずだ――その理由もな。彼らのベータがすでに報告しているだろう。正直なところ、昨夜のうちに怒りを瞳に宿して乗り込んでくるものだと思っていた。彼らのルナにあんな真似をした俺を引き裂くためにな。俺はそれを歓迎しただろう。少なくともそうくれば、彼らの完璧で小さな夜を台無しにできたと確信できたからだ。だが、奴らは来なかった。

まだマシな方かもしれない。冷たい粘板岩色のコンクリート壁に囲まれ、快適さのかけらもない殺風景なこの部屋は、明らかに囚人用だ。だ...

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