第5話
次の授業にはイーサン、キャット、そしてジェシーがいた。まさに一長一短、愛憎入り混じる状況だ。キャットの隣に座ればイーサンの嫌がらせは防げるが、今度はジェシーとその取り巻きから絶え間なく侮辱の言葉を浴びせられることになる。気丈に振る舞ってはいても、彼女の言葉は私の心を深くえぐった。
一日中、体育の授業が憂鬱でたまらなかった。これから一ヶ月ほど、バレーボールとバスケットボールに分かれて行うことになっていたのだ。スポーツは昔から苦手だし、笑い話みたいだが、ボールはいつも磁石のように私の顔に吸い寄せられてくる。イーサンとキーランがいないという理由でバレーボールを選んだのだが、運の悪いことに、そこにはジェシーがいた。
選択肢はろくなものじゃなかった。あの強引な双子がいるバスケか、ジェシーの悪口が飛び交うバレーか。私なら迷わず悪口の方を選ぶ。中サイズの体操着のシャツは着心地がよかったが、短パンはSサイズしかなかった。私はもともと痩せ型だが、腰回りが張っていてお尻もしっかりあるタイプなので、短パンが太ももの上の方までずり上がってしまう。いつ破れてもおかしくない見た目だったが、あの奇妙なメッシュ素材の体操着は、意外と丈夫にできているものだ。
なんとか十五分間、バレーボールを避け続けてやり過ごした頃、事件は起きた。ジェシーがサーブを打ち、相手チームの誰かがそれを打ち返した。ボールは一直線に私の顔めがけて飛んできた。衝撃に備えて身構えたその時、私は突然、地面に叩きつけられた。頭がリノリウムの床に跳ね、鈍い音が響く。歯がかち合い、朦朧としたうめき声が漏れた。
「クソッ、ソフィア。大丈夫?」
頭上からリリアンの聞き慣れた声がした。彼女が差し伸べてくれた手をありがたく掴み、引っ張り上げてもらう。世界が少しぐらついた。明日はひどい頭痛に悩まされるだろうが、死ぬことはなさそうだ。
「一体何が起きたの?」
私は血が出ていないかこめかみの辺りを確かめながら唸った。リリアンの視線を追うと、そこには勝ち誇ったような目のジェシーがいて、別の女子とクスクス笑っているのが見えた。目が合うと、彼女は挑発するように手を振ってきた。
「ジェシーという災難が起きたのよ」
私は歯を食いしばり、自分の問いに自分で答えた。ふと気づくと、バスケをしていた他の生徒たちも手を止め、今の騒ぎを野次馬根性で見つめていた。私の視線は他の生徒たちを巡り、やがてイーサンとキーランのところで止まった。汗ばんだ肉体と乱れた髪を見て、心臓が止まりそうになる。だが、私の血の気を引かせたのは、彼らが私に向けていた殺気立った睨みだった。
「リリアン、ソフィアを保健室へ連れて行きなさい」体育教師が怒鳴った。「他の者はプレーに戻れ!」
数回ホイッスルが鳴ると、まるで何事もなかったかのように授業が再開された。リリアンに付き添われて保健室へ行き、二人で座って待つことになった。
「すぐ戻るわね、ハニー。理科室で可哀想な子が吐いちゃって」養護教諭は身震いすると、部屋から飛び出していった。
「ついてないのはあんただけじゃないみたいね?」リリアンがクスクス笑った。
「一理あるわ」私は乾いた笑いを漏らしたが、頭がズキズキと痛み始めていた。「少なくとも、彼女が私を突き飛ばしたところを全員が見てた」
「だとしても、彼女がお咎めを受けることはないわよ」リリアンは顔をしかめた。
「どうして? みんな見てたじゃない。いつからそんなことが許されるようになったの?」
「彼女がジェシーで、キーランのお気に入りのおもちゃだからよ」リリアンは面白くもなさそうに笑った。
私はかぶりを振った。「あいつら一体何なの? どうしてトラブルにならないわけ?」
「親がこの町を牛耳ってるようなものだからね」リリアンは肩をすくめた。「誰も彼らを敵には回したくないのよ。特にあの双子はね」
「そんなの間違ってる」私は呟いた。「リリアン、ここに一緒にいなくてもいいのよ」
「体育をサボれるなら口実は何でもいいの」リリアンは笑った。「頭の具合はどう?」
「頭ごと取り替えたい気分」私はそう言いながら、先生が鎮痛剤をくれることを願った。
「あ、それで思い出した。今週の土曜にパーティーがあるんだけど、一緒に来てほしいの。放課後キャットも誘うつもり」リリアンはにやりと笑った。
「今の会話のどこでパーティーを思い出したのよ?」私は呆れて首を振った。
「さあね。で、興味ある?」
リリアンはどんなグループにも馴染めるタイプの女の子だ。運動部の友達も多いが、どこにいても浮くことがない。
「まあね」私は肩をすくめた。バイトは朝の八時から夕方の六時までだから、シャワーを浴びて着替える時間は十分にある。
「やった! ドレスか何か着てきてよ。ずっと履きたかったヒールがあるんだ」
「ドレスなんて持ってないし、動きやすい格好がいいな」私は肩をすくめた。酒もタバコもやるつもりはない。ただ友達の付き添いで行くだけだ。目立つことだけは避けたかった。
「待って、双子も来るの?」私は顔をしかめた。もし彼らが来るなら、絶対に行かないつもりだ。
「あいつら、私たちのパーティーには絶対来ないのよね」リリアンは鼻で笑った。「自分たちのパーティーの方が上だとか思ってるんでしょ、きっと。森の真ん中でパーティーなんて、誰がやるのよ? 変人たちね」
「確かに変だし、なんだか殺されそうな雰囲気だよね」私は同意した。
保健室の先生が顔色の悪い生徒を連れてきたため、リリアンは教室に戻らなければならなかった。先生は私を診察し、鎮痛剤をくれた後、もう帰ってもいいと言った。
「いえ、結構です」私は首を横に振った。「友達が車で送ってくれることになってるし、歩いて帰りたくないんで」
「お母さんに電話しましょうか?」ふくよかな先生は穏やかに微笑んで提案した。
「いえ、いいです。必要ありません。母は仕事中だし、電話したら機嫌が悪くなるので」
「そう、わかったわ。無理しないで水をたくさん飲むのよ。一度お医者さんに診てもらった方がいいわね」と先生は忠告した。
「ええ、そうですね。病院に行ってみます」と私は嘘をついた。近いうちに医者に行く可能性なんてゼロだった。一番近い病院がどこにあるのかも知らないし、保険に入っていないこともほぼ確実だったからだ。
先生が他に何か言う前に保健室を出て、ロッカーへ向かった。廊下で三十分ほど座り込んでから、ようやく重い腰を上げる気力が湧いてきた。早退という選択肢はなかった。ダレンが家にいるだろうし、私を見たらすぐにローレンに告げ口するはずだ。
床から立ち上がると、授業終了のベルが鳴った。私はゆっくりと動き、ロッカーを開けてボロボロのリュックに教科書を詰め込んだ。二度目のベルが鳴ると、生徒たちが教室からどっと溢れ出てきた。
馴染み深いが、どこか陶酔させるようなコロンと男の汗の匂いが鼻をくすぐった。私はため息をこらえ、ロッカーを乱暴に閉めた。
「お人形さん、今日はついてないみたいだな」イーサンがニヤリと笑った。彼の黒い瞳は兄弟と私の顔を行き来した。イーサンは私の片側に、あまりにも近く立っていた。キーランは反対側に立ち、黒い瞳で私を見下ろしていた。
「頭の具合はどうだ、スイートハート?」キーランの声は荒っぽかったが、口の端は下がっていた。彼らの心理ゲームのせいで、頭がまたズキズキし始めた。ある時は侮辱し、次はイーサンがベタベタ触ってくる。殺すような目で睨んできたかと思えば、後で心配してくるのだ。
私が何か言う前に、キーランが私の顎を掴み、自分の方へ向かせた。その感触に奇妙な戦慄が背筋を走り、イーサンの吐息が耳にかかると私は身震いした。キーランのもう片方の手は驚くほど優しく、私をさらに混乱させた。彼は私が体育館の床に打ち付けた場所に触れた。痛みに思わず声が漏れ、私は身をすくめてイーサンの方へ体を寄せた。
「かわいそうなお人形さん、怪我しちゃって」イーサンが耳元で囁いた。「どういうことかわかるよな、キーラン」
「気分を良くしてやるよ、スイートハート」キーランの声は荒い囁きで、指が私の顎を強く掴んでいた。
胸の中で心臓が早鐘を打っていた。逃げ出したいという衝動が常にあった。私は自分自身と戦っていた。逃げたいと思う自分がいる一方で、彼らの優しい手触りと向けられる関心に心地よく浸っている自分もいた。
イーサンの手が私の腰を掴むと、驚きの声が漏れた。彼の指がシャツの裾を弄び、その下の柔らかな肌をかすめた。
「や、やめて」私は呟き、彼の手を押しのけようとした。彼は私の手を難なく払い、キーランが私の頭を傾けた。
「シーッ」キーランのミントの香りのする吐息が、魅惑的に顔にかかった。キーランが私の頭を横に傾け、柔らかい唇が私の首筋に押し当てられると、私は飛び上がった。
「何してるの?」唇が首筋を下がっていくのを感じて、私は叫んだ。気持ちよかった、なんて言葉じゃ足りないくらいだ。私の心の奥底のどこかで、このまま誰もいない廊下に彼らといたいと願っていた。私たちだけの小さな世界の外にある生活に、これ以上悩まされることのない場所に。
「気分を良くしてやってるんだよ、お人形さん」イーサンが囁き、指で私の素肌の腹部に模様を描いた。キーランは口を使うのがうまく、首や肩についばむようなキスや甘噛みを残し、私は痛みと快感で喘いだ。
「ソフィア?」キャットの聞き慣れた声と、パタパタという足音が廊下に響いた。遠くの壁の時計は午後二時十二分、二度目のベルから二分過ぎたところを示していた。
私の頭が追いつかないほどの速さで、キーランとイーサンは私から身を引いた。
「またな、スイートハート」キーランが耳元で囁き、うっすらと生えた無精髭が私の頬をくすぐった。彼の荒っぽい声に私は目に見えて身震いし、視線は彼のふっくらとした唇が作るニヤリとした笑みに釘付けになった。二人にキスしたい気持ちと、突き飛ばして逃げたい気持ちがせめぎ合っていた。
双子は背を向け、私を廊下に一人残して去っていった。一秒後、奇妙な表情を浮かべたキャットが視界に入ってきた。まあ、双子が正しいことが一つだけあった。頭痛はもう、薄れゆく記憶となっていた。
