第91話

一瞬にして視界が真っ赤に染まり、耳元で轟く血流の音以外、何も聞こえなくなった。私の能力は、仲間の狼たちが抱く強烈な感情を洞察する力を与えてくれる。彼らも私たちと同じように物事を感じるが、その反応は個体によって驚くほど異なる。だが、自分自身の狼がこれほどの怒りを露わにしたのは初めてだった。あるいは先の戦いの最中にも感じていたのかもしれないが、あの時は混乱のあまり、その感情の真髄を味わう余裕などなかったのだろう。

化粧台の前の椅子からいつ立ち上がったのか定かではないが、体は恐ろしいほど熱く、肌がひりついて、皮膚が引きつるような不快感を覚えた。タオルが体から滑り落ちても、火照った体を冷ます役には立...

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