第109章

園長先生のオフィスを出て、江口美咲は先生からこどもたちを引き取った。

「ママはもう少し用事があるの。おばさんのところで遊んでいてくれる?」帰り道で、江口美咲は怒りを抑えながら、何でもないように笑って二人の子どもたちに尋ねた。

二人の子供は深く考えず、ママが仕事で忙しいのだと思い、素直に頷いた。

江口美咲は子どもたちを鈴木薫に預け、車に戻ると表情が再び曇り、高橋家の屋敷へと車を走らせた。

「若奥さま……」田中さんはドアを開けるなり、挨拶しようとしたが、江口美咲の表情を見て、言葉を飲み込んだ。

江口美咲は彼女に軽く頷き、リビングを見た。「高橋隆司はいる?用があるの」

それを聞いて、田...

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