第117章

江口美咲は本当に怯えていた。体が思わず震え、本能的に彼の胸に身を寄せていた。

彼女の震えを感じ取り、高橋隆司の心が少し和らいだ。眉をひそめながら口を開いた。「そんなに怖いなら、なぜ入ってきたんだ?」

耳元で聞こえる声に、江口美咲はしばらく反応できなかった。

高橋隆司は仕方なく溜息をついた。「外に連れ出すよ」

江口美咲はゆっくりと我に返り、耳に届く声がどこか懐かしく、身を包む香りに心が沈んだ。

高橋隆司?いや、どうしてここに……

江口美咲は疑わしげに顔を上げ、男の気遣いを含んだ瞳と目が合った。

視線が交わり、江口美咲は再び体が硬直した。我に返ると、顔から恐怖の色が消え、無表情で男...

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