第121章

江口美咲は彼の指さす方向を見やると、星ちゃんが壁の隅で膝を抱えて丸くなっている姿が目に入った。虚ろな瞳は、まるで魂の抜けた精巧な人形のようだった。

いつも自分を見るたびに見せる甘い笑顔を思うと、江口美咲は胸が締め付けられるような痛みを感じた。

今朝まで、キラキラした瞳で自分のスカートの裾を掴んでいた小さな子が、今はこんな姿に……

江口美咲は足音を忍ばせて部屋に入り、小さな子の前にしゃがみ込み、優しく名前を呼んだ。「星ちゃん、おばさん来たよ」

けれど星ちゃんは何の反応も示さなかった。

この様子を目の当たりにして、江口美咲はしばらく声が出なかった。

青木拓哉が彼女の背後から小声で言っ...

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