第157章

言葉が落ちると同時に、石川家の人々は一斉に別荘の入り口に目を向けた。江口美咲も思わず視線を同じ方向に移した。

高橋隆司が墨色のオーダーメイドスーツを身にまとって立っていた。精巧な仕立てのスーツは男の鍛え上げられた体を引き立て、後ろに撫でつけられた髪が鋭い顔立ちを露わにしていた。額に少し落ちた前髪が冷たい瞳の色を引き立て、人を寄せ付けない雰囲気を全身から漂わせていた。

瞬く間に、招待客たちの視線が彼に集まった。

高橋隆司の数歩後ろには、藤原花子が目を引く漆黒のドレスを纏い、丁寧に巻かれた髪が胸元に垂れ、赤い唇が印象的だった。彼女は松本媛の腕に親しげに手を回し、高橋隆司の足取りに合わせて歩...

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