第158章

江口美咲は挨拶を交わした後は黙り込んでいた。石川おじいさんが何も言わない以上、勝手に席を外すわけにもいかず、ただ静かに傍らに立って彼らの会話に耳を傾けるしかなかった。

松本媛は江口美咲から視線を外し、石川おじいさんを心配そうに見つめた。「お体が良くなられて、本当に石川家にとって何よりの喜びですね」

石川おじいさんは笑顔で頷くと、顔を江口美咲の方へ向け、こう言った。「江口先生のおかげですよ。彼女がいなければ、今頃わしはまだベッドで寝たきりだったでしょうな!」

その言葉が落ちると、一同の視線が揃って江口美咲に注がれた。

石川幸子も相づちを打った。「江口先生は私たち石川家の恩人なんですよ」...

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