第165章

多くの視線が注がれる中、江口美咲は高橋隆司に手首を掴まれ、ほとんど強引に宴会場から引きずり出された。

江口美咲は何度か振り払おうとしたが、男の手は死ぬほど強く握りしめられていて、逃れる隙を一切与えなかった。別荘から出るまでその状態が続き、やっと手首の圧力が少し緩んだ。

江口美咲は歯を食いしばって手を振り払い、二歩後ろに下がって距離を取った。「高橋社長のご厚意は有難いですが、私は自分で帰れますので。わざわざ社長に送っていただく必要はありません。それに、お母様とお婚約者様もまだ中にいらっしゃるでしょう。社長はお二人のお側にいた方が良いのでは」

そう言うと、男の横を素通りして、屋敷の門へと向...

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