第3章

数人が荷物を手にして出てくると、空港の入り口で鈴木薫が待っているのが見えた。

鈴木薫と江口美咲は大学時代の同級生で、今では親友同士となっている。彼女も医師で、自分の家系列の病院で働いている。

「美咲、こっち!」鈴木薫は江口美咲と二人の子供たちに手を振った。

「久しぶり!今日は迎えに来てくれてありがとう!」江口美咲は鈴木薫の腕に手を回しながら笑顔で言った。

二人の子供たちは鈴木薫を見て、とても嬉しそうだった。

「おばちゃん!」二つの甘い声に鈴木薫の耳が幸せで溶けそうになった。

健太と陽はそれぞれスーツを着こなし、とてもかっこよく見えた。

「おばちゃんのこと、恋しかった?」鈴木薫は屈んで健太の頬をつまんだ。小さな男の子はふんわりとして可愛らしかった。

そして陽の頭も撫でながら、「相変わらずかっこいいわね!」

「もちろん恋しかったよ。おばちゃん、もっと綺麗になったみたい!」陽は鈴木薫を見つめながら、心を込めて言った。

鈴木薫はその言葉を聞いて、思わず笑みがこぼれた。「子供は嘘をつかないって言うもんね。陽くんの言うことは本当なのね!」

「当たり前だよ。おばちゃんとママは僕たちの中で一番綺麗なんだから!」健太は小さな頭を上げて、真剣に言った。

「じゃあ、行きましょうか」と言いながら、荷物を持って歩き出そうとした。

江口美咲は表情を変えて、「薫、ちょっと待っててくれる?お腹の調子が悪くて、トイレに行ってくるわ!すぐ戻るから!」

きっと機内でコーヒーを飲んだせいで、胃腸の調子を崩したのだろう。

鈴木薫は頷いて、「わかったわ。早く行ってきて、ここで待ってるから!」

そう言って、子供たちが走り回らないように、両手で一人ずつ掴んだ。

江口美咲は頷いてトイレの方向へ走っていった。

二人の子供たちは周りのことが気になって仕方がないようで、きょろきょろと辺りを見回しては、時々鈴木薫に質問したり話しかけたりしていた。

「日本の空気は海外より気持ちいいね。なんだかすごく楽しい気分になってきた」と陽が言った。

鈴木薫は彼を見て、思わず笑みを浮かべた。「ここの空気が海外より気持ちいいって分かるの?」

陽は頷いて、「うん、なんか帰ってきた感じがするんだ」

健太も続けて、「そうそう、ここにいるとすごく落ち着くの。きっと家に帰ってきた感じなんだよ」

鈴木薫は二人の子供たちが真面目くさって話す様子を見て、思わず笑みがこぼれた。「まだ若いのに、色々分かってるのね」

この二人は同年代の子供たちより知能が高いことは知っていたが、まさかこんなに感慨深げに帰国を語るとは思わなかった。江口美咲も彼らと一緒に国内でしばらく過ごすべきだろう。

日本の素晴らしい景色を体験させてあげたい。

約十分後、江口美咲がトイレから出てきて、戻ろうとした時、突然聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「子供一人すら見られないのか!何のために雇っているんだ!」高橋隆司の顔は険しく、氷のように冷たい声で言い放った。

江口美咲がその声の方を見ると、精巻な立体的な、美しくも妖艶な、そして見覚えのある顔が目に入った。

あの顔...とても見覚えがある。よく見ると、思わず驚いてしまいそうになった。あの男性は高橋隆司だった!

なんという運の悪さだろう。帰国初日に空港で彼に出会うなんて!

まずい、早く子供たちを連れて出なければ。見られたら大変なことになる。

江口美咲は心の中でそう思い、高橋隆司の視線を避けながら、急いで元の場所へ戻った。

彼らと高橋隆司の距離はわずか五メートル。この偶然の出会いに心臓が飛び出しそうだった!

「薫、早く行きましょう!」彼女は緊張した様子で鈴木薫に声をかけた。

一方、電話を切ったばかりの高橋隆司は、聞き覚えのある声を耳にして思わず振り向いた。すると、一つの影が自分の横を素早く走り過ぎるのが見えた。

あの女性のシルエットはどこか見覚えがある。まさか...

江口美咲?あの女性が?帰ってきたというのか?

腹立たしい女だ。あの時、子供を置いて出て行ったくせに、今更戻ってくるとは。

あの時の薬の件も、まだ清算していない。

そう思った高橋隆司は長い足で前に進み出したが、数歩も進まないうちに再び電話が鳴り、我に返った時には、先ほどの女性の姿は消えていた。

鈴木薫は二人の子供の手を引きながら、江口美咲に引っ張られて前に進んでいた。困惑した表情で「どうしたの?美咲?」

「さっき高橋隆司に会っちゃった!」江口美咲は小声で鈴木薫の耳元に囁いた。

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