第40章

江口美咲は高橋隆司にあまり変化がないのを見て、心の中でほっと息をついた。先ほどの電話を彼が気にしていなかったようで良かった。

そうだ、六年前から自分に対して何の感情も持っていなかったのだ。子供ができた後でさえも同じだった。

先ほど自分の心に浮かんだ一連の感情が可笑しくさえ思えた。

なぜ高橋隆司があの電話を気にするとでも思ったのだろう?

彼女と高橋隆司は今や完全に別の世界の人間だ。当時、彼はあれほど冷酷だったのだから、六年経った今も、自分に対する気持ちが大きく変わるはずがない。

「江口さん、お茶をどうぞ」石川悠斗の声に、江口美咲は我に返った。

どういうわけか、石川悠斗はこの二人の関...

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