第49章

腹立たしくも滑稽だった。

自分には何も資格などない。

彼の目には、自分はかつて何の資格も持っていなかった……

自嘲気味に瞳を伏せ、結局彼女は口を開かなかった。心を鬼にして手を上げ、ゆっくりと女の子の小さな手から自分の服の裾を解きほぐした。

女の子がもう一度手を伸ばそうとしたが、彼女は空中でその手をつかんだ。

「陽と健太が、おばさんを待ってるの。パパと一緒に帰ってね。おばさんは二人を探しに行かなきゃ」

江口美咲は女の子の頭を撫で、その手を体の横に置くと、先生に慌ただしく挨拶をして、振り返ることなく足早に立ち去った。

車に戻ると、二人の子供たちはきちんと座って待っていた。彼女が乗り...

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