第73章

夕方になっても江口美咲からの電話は一向にかかってこなかった。

高橋隆司は胸の奥に湧き上がる不快感を抑えながら、幼稚園へ星ちゃんを迎えに向かった。

いったいどうなっているのか、幼稚園に着けば分かるだろう。

幼稚園に到着すると、子どもたちはほとんど帰ってしまった後だった。

高橋隆司はすぐに隅に立っている自分の娘の姿を見つけた。

小さな女の子は項垂れ、両手でリュックのストラップを握りしめ、すっかり元気をなくしていた。

その様子を見て、高橋隆司は眉間にしわを寄せながら前に進み、娘の頭を撫でた。「どうしたの?機嫌悪いね。パパが遅くなったからかな?パパが謝るよ……」

言葉が終わらないうちに...

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