第76章

星ちゃんの姿を見た江口美咲は、一瞬固まり、そして胸が痛むような感覚に襲われた。ほとんど本能的にしゃがみ込み、小さな女の子を抱きしめ、背中をさすりながら慰めた。

星ちゃんは両手で江口美咲の服の裾をぎゅっと握りしめ、悔しそうにしゃくりあげていた。

この光景を目にした高橋隆司の目には、再び諦めの色が浮かんだ。

さっき家で、父親である自分が手を伸ばして抱こうとしたのに、この小さな子は黙ったまま逃げるばかり。

それなのに今、江口美咲の前では抱っこをせがむ。

やはり、子供は本能的に母親に甘えるものなのだろうか。

「泣かないで、おばさんに教えて、どうしたの?」江口美咲は心を痛めながら小さな女の...

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