第81章

子供たちは顔を見合わせると、手に持っていたレゴを置いて、一斉にキッチンへと駆け込んだ。

「ママ、どうしたの?」陽と健太は心配そうな表情でママを見つめた。

江口美咲はようやく我に返り、目の前の二人の幼い子どもたちを見て、さらに不安が募った。目を伏せ、何とか胸の内の感情を押し殺すと、笑顔で首を横に振った。「何でもないよ。ママがちょっと手を滑らせて、お茶碗を割っちゃっただけ。入ってこないで、床にガラスの破片があるから」

そう言うと、何事もなかったかのように身をかがめ、床の散らかった破片を拾い集め始めた。しかし、心の中は依然として混乱したままで、ガラスを拾う時も少し上の空だった。

高橋隆司は...

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