第5章
瑞穂視点
智志は、私に答えなかった。
彼は部屋の隅にある、銀色の金属製ケースへと歩み寄る。靴箱ほどの大きさしかないその小さな箱の隙間からは、冷気が漏れ出していた。
心臓が、早鐘を打ったように重く沈む。
「それは、何?」
喉が張り付くような声で、私は問う。
彼は私に背を向けたまま、肩を強張らせていた。カチリ、と解錠音が響く。まるで銃弾が装填されたかのような、乾いた音だった。
振り返った彼の腕には、ひとつの包みが抱えられていた。
青いビロードの布にきつく巻かれ、顔は見えない。ただ一房、色の濃い髪だけが覗いている。
智志の手が震えていた。ニューヨークのマフィアたち...
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