チャプター 291

海溝の外縁に足を踏み入れた瞬間、水が変わった。

それはまるで鼓動のように、あるいは水流の変化として感じられた。肺を警告のように締め付けるその圧力を、私はそれまで気づかずにいたのだ。隣を泳ぐウェイクが速度を落とし、全身を警戒させる。彼は目を細め、前方に広がる暗闇を鋭く見据えた。

「近いぞ」彼が低く呟く。

「街に?」私が訊ねる。

「門にだ」彼は言った。「だが、歓迎されるとは思わないほうがいい」

そりゃ素敵ね。

「街は外郭の衛兵によって守られている」彼はまだ見えない何かを目で追いながら続ける。「彼らは警備というものを非常に深刻(シリアス)に捉えているんだ。そうせざるを得ないからな」

「その『深...

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