チャプター 311

ウェイクが入ってくる。ゆっくりとした、慎重な動きだ。鎧は脱ぎ捨てられ、代わりに暗色の布が腰回りに低く纏われている。それはまるで、海流に捕らわれた海藻のように背後に長く引いていた。上半身は水滴で濡れそぼり、深紅と黒曜石の鱗が薄暗がりの中でほのかに発光している。

彼と視線が合う――その瞳は燃えるように熱い。

彼は何も言わない。

私もまた、沈黙を守る。

私は浴槽からゆっくりと立ち上がる。肌を滑り落ちる雫が、柔らかな青い光を捉えて煌めく。感じる――彼の視線が私の曲線を、肌の隅々まで辿っているのを。まるで私の身体という地図を記憶に刻み込もうとしているかのように。

心臓が肋骨を強く叩く。

「ラ...

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