チャプター 72

唐突に、互いの間の距離がもどかしくなる。私たちは激しく求め合い、主導権を争うように舌を絡ませた。キスは瞬く間に深まり、ほんの一瞬、世界からすべての音が消え失せる。不安も、恐怖も、重圧も――すべてが水の中へと溶け出し、後には私たち二人だけが残された。髪に絡まる彼の手が強まり、私を引き寄せる。私は彼を感じることだけに没頭する。口元の熱、そして私に押し付けられた体の確かな力強さに。

海が四方から私たちを包み込む。これが天国というものだろうか、と私はまたしても思う。

答えは出ない。けれど、彼が顔を離し、顎から首筋、そして鎖骨へと唇を這わせていくにつれ、その答えを見つけるのも悪くない気がしてくる。

...

ログインして続きを読む