第82章

この女、以前は酒など一滴も口にしなかったはずだ。数年見ない間に酒量が上がったどころか、他人の杯を肩代わりする知恵までつけたというのか。

さっき二階にいた時、彼女があの男のために何杯も干しているのを、この目でしかと見た。

今また俺の目の前で、悪びれもせず男を庇うとは……俺の心情など微塵も顧みないつもりらしい。

「林田社長、それはどういう意味だ? まるで俺が、故意に葉田さんを困らせているような言い草だな。こういう席で酒を酌み交わすのは、ごく当たり前のことだろう?」

佐藤聡は淡々と言い放ったが、周囲の人間にとっては痛烈な詰問に他ならない。そこには明白な挑発が含まれており、もし相手が他人であ...

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