第10章 父はいなくなった

千葉清美は急いで病床の側まで歩み寄り、しゃがみ込んだ。

「お父さん、どうして病院に行かなかったの?こんなに具合が悪くなってたなんて…」千葉清美は父の冷たくなりかけた手を握った。

千葉智子は鼻で笑い、冷ややかに言い放った。

「簡単に言うわねぇ!病院?病院にはお金がかかるのよ!うちにそんなお金なんてあるわけないでしょう!」

千葉清美は顔を上げて彼女を見つめた。

「結婚の時、福江家から結納金をもらったじゃない?どうしてそれをお父さんの治療費に使わなかったの?」

千葉智子は一瞬言葉に詰まり、嘘をつくための言い訳を考えているようだった。

「あの程度の結納金で何になるっていうの?借金返済に...

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