第14章 福江良平、あなたは私を痛めました

STグループ本社。

最上階、社長室。

秋の陽光が巨大な無垢のガラス窓から惜しみなく差し込んでいた。

福江良平は執務机の後ろに座り、端正な顔立ちは氷細工のように美しかった。

今、彼は手元の書類に目を通していた。

それは秘書の中村颯太が先ほど持ってきたものだった。

「社長、千葉グループの帳簿上で160億円の穴が開いています。会社はもう経営を続けられる状態ではありません。千葉茂の妻と末娘は葬儀を済ませるとすぐに国外へ逃げました。千葉茂はこの尻拭いを全て千葉清美に押し付けたんです。清美さんは学生でしょう?何もわからないはずです。きっと千葉グループの相続を放棄するでしょう。だって、160億...

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