第23章 彼は彼女の感情に感染された

千葉清美は夜空に輝く星々を見上げていた。

頬に冷たい湿り気を感じた。

いつの間にか涙が流れ落ちていた。

きっと彼女は、ずっと泣きたかったのだろう。ただ我慢していただけだ。

今夜の切られた電話が、彼女の感情を爆発させる導火線となった。

福江良平は実は、すでに別荘に到着していた。

車の後部座席に座り、窓を下ろして外を眺めていた。

降りるとは言わず、運転手は車内で待ち続けた。

別荘のリビングの灯りは薄暗く、その光の中で窓辺の人影は儚げに見えた。

弱々しく、か細い影。

彼女の少し上を向いた顔に、涙の光が揺れていた。

泣いているのか。

何か悲しいことがあったのか。

亡くなった...

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