第29章 彼女は浮気した

福江良平は冷たい目で彼を一瞥した。

「出て行け」

高橋北は笑いながら立ち去った。

福江良平は高橋北が渡してきた書類に目を通していた。

デスクの内線が鳴る。福江良平は受話器を取った。

唐沢知子の声が電話越しに聞こえてきた。

「良平、今時間ある?」

「ない」

すぐに切ろうとする。

唐沢知子が慌てて叫んだ。

「良平、切らないで。大事な話があるの」

福江良平はすでにイライラし始めていた。

「じゃあ、早く言え」

唐沢知子は向こうで3秒ほど躊躇したようだ。

「良平、千葉清美が妊娠してるの知ってる?」

福江良平の目が僅かに震えた。

「妊娠だと?!」

「良平、やっぱり知らな...

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