第76章

「佐藤久志……」水原優子は彼の名前を呼んだ。

確かに、彼女の携帯には堂々とした内容しかなく、人に見られたくないようなメッセージも一切なかった。

だが、彼にこうして疑われ、目の前で勝手に開かれるのは、心に深い悲しみを感じた。

まるで自分が本当に彼を裏切り、結婚を裏切り、何か許されない大罪を犯したかのような気分だった。

でも実際は、裏切ったのは彼の方なのに。

もういい、彼がそこまで見たいのなら、見せてあげればいい。

水原優子は両手を下げ、もう抵抗しなかった。

佐藤久志は彼女のLINE画面を見ていた。これ以上見るつもりはなかったが、指が誤って彼女と向山延司のチャット画面に触れてしまっ...

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