第45章

葉山風子の目は一瞬で見開かれ、口の中の酸っぱさで彼女の脳はほぼフリーズしかけていた。

葉山風子が意識を取り戻したとき、必死に桂原明を叩いて押しのけようとしたが、この男の両腕はまるで鉄の鉗子のように彼女をしっかりと抱きしめていた。

キッチンには奇妙な光景が広がっていた。夫婦が抱き合いキスをしているのだが、二人の唇の端からは唾液が垂れ、目からは涙が流れていた。

みかんの酸っぱさがついに耐えられなくなったとき、桂原明はようやく葉山風子の口から離れた。

「酸っぱすぎる。これがお前が買ったみかんか?今後こんな果物を買うのは禁止だ!」桂原明は口の中のみかんの果肉を吐き出し、水を一杯掴むと必死にう...

ログインして続きを読む