第50章

桂原明が家に戻ったとき、すでに時間は遅くなっていた。葉山風子がもう眠っていると思い、リビングを歩く際には足音を立てないよう、意識的にゆっくりと静かに歩いていた。

キッチンを通りかかったとき、桂原明は立ち止まった。今日の四品目の料理、最後の魚の皮のことがまだ気になっていたのだ。

桂原明は魚の皮が漬けてある瓶の前まで来た。瓶越しにそっと香りを嗅ぐと、酸っぱくて辛い匂いがした。

桂原明は少し迷った。中の秘伝のタレがどんなものか見てみたいし、魚の皮の味も試してみたかった。

「やめておこう。葉山が一晩漬け込まないと食べられないって言ってたんだ。明日まで待とう。失敗したら、またあの女に責められる...

ログインして続きを読む