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ツネオ

それは複雑であり、同時に単純な答えでもあった。だが、かつてこの場所が繁栄し、活気に満ちていたなどと、どうすれば彼女に伝えられるだろう? こここそが、私たちのハネムーンの目的地になるはずだった場所だなどと、どう言えばいいのだ? いっそ道に迷ったのだと嘘をついてしまいたかった。

「ここはかつて、妖精の湯だったんだ」

彼女は息を呑み、辺りを見回した。その場所自体は見る影もなく変わり果てていたが、少なくともその名前には聞き覚えがあったようだ。悲しげな吐息が漏れ、彼女の瞳が微かに光を帯びた。パイラなら、少なくともここに来たことがあるのだろうと私は推測した。

『記念日の一つに、ここに来たこ...

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