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ツネオ視点

彼女は俺に話しかけているのだと思った。だが、タロフは退こうとしない。それどころか、彼女の前に出ようと俺たちの体を押し進めた。その時、俺は気づいた。彼女は俺たちに話しているのではない。

彼女は、あの化け物に語りかけていたのだ。

彼女のオーラが巨大な翼のように広がり、大気を熱した。俺たちはその光景に圧倒され、言葉を失った。化け物は後ずさりし、彼女の光に苦しむかのように身をよじらせた。

「鎮まりなさい!」彼女は命じた。

獣は抵抗していた。執拗に地面を爪で引き裂き、岩の破片や瓦礫を四方八方に撒き散らす。俺は剣を掲げ、薙ぎ払われた爪を間一髪で弾き返した。衝撃で腕が痺れたが、俺は踏み...

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