CH19

【ツネオ】

「父は悲しみの淵にいる男だ」

「ケイジもそう言っていたわ。でも、もう少し情報が欲しいの」

私の思考は、病に倒れたあの運命の日へと引き戻された。母上が殺害されたという知らせは、国中を深い喪失感で包み込み、重苦しい悲しみの帳(とばり)が空気中に垂れ込めた。日々は、囁かれるお悔やみの言葉と、終わりのない葬儀の儀式の中で霞んでいった。

そして熱がやってきた。耐え難いほどの寒気が私を襲い、うだるような暑さの中でも震えが止まらなかった。視界は滲み、世界は悪夢のような色彩の万華鏡へと変貌していった。暗闇に屈する前に最後に覚えているのは、父とマヤの心配そうな顔、そして部屋の向こうから聞こえる...

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