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ツネオ

「どういうことだ?」

その日全体、つい昨日のことだけでなく、それ以前の日々も含めて、俺の記憶の中で巨大な空白となっているようだった。

その考えに、胃がひっくり返るような気分になった。単なる偶然にしては具体的すぎる。意図的なものに違いない。彼が自らの意志で全てを忘れようとした可能性はあるだろうか? 分からない。だが、そうとは思えなかった。

もし彼が自ら忘れようとするなら、これらはリストに入るべきではないはずだ。パイラの死。彼女の死後の孤独な歳月。娘の死でさえも。だが、俺がアクセスできないとしても、彼はそれらの記憶をすべて持っていたのだ。

誰かが彼から記憶を奪えるという考えは、到...

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