CH29

ツネオ

一瞬の沈黙が流れた。そして、彼女は動き出した。肩の傷を清めるその手つきは優しかった。薬が染みたが、自分の爪で肉を抉った時のズキズキと疼く痛みに比べれば、ほとんど気にならなかった。

「何も言わないの?」

俺は黙っていた。

「そう。毒でおかしくなったとか?」俺は鼻を鳴らした。「違うわね。じゃあ、何らかの理由でドラゴンの凶暴性が増したとか?……それとも、罠から抜け出すために自分の足を食いちぎる獣のようなものかしら?」

俺は奥歯を噛みしめ、彼女の手が止まった。

「ツネオ? 図星なの?」

俺は躊躇した。幻覚の記憶と焼けるような痛みは、まだ鮮明だった。彼女を信頼し、全てを打ち明けたい...

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