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レン

私は彼の名を知らなかったが、「本物のレン」は知っていた。

タツミジョウ・リュウ……。

竜王であり、実質的なこの街の支配者だ。

彼は背が高く、マカを見下ろしていた。座っている私よりも遥かに高い。頭にはニット帽を被っており、仕立ての良い黒いスーツとは奇妙な対照をなしていた。肩幅は広く、襟元からはインクのようなものが覗いている。タトゥーか。

いや、痣(あざ)か。

それはまるで……鱗のように見えた。

瞳は金の縁取りがあるダークオパール。あらゆる色彩が凶暴な光を帯びて煌めき、その光景に私の身体を熱が駆け巡った。彼の顔は、氷のように冷たい怒りの仮面を被っていた。

無慈悲。

獰猛。

本物のレン...

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