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レン

その階に降り立ち、素早く周囲を走査した。奴らの数が増えている。幸い距離はあり、まだこちらの存在には気づいていないようだが、その鋭い視線は油断なく群衆の中を探っていた。一刻も早く姿を消さなければ。

別の列車の接近を告げる音が響き渡り、私はそこへ向かって駆け出した。電車に飛び乗れば、少なくとも時間は稼げる。もし乗れなかったとしても、乗車したと思わせておいて地上へ向かえば、奴らを撹乱できるはずだ。

疾走する胸の中で、心臓が早鐘を打つ。この階層にも乗り場があるのだ。背後で奴らが声を掛け合い、猛追してくる気配を感じた。私はホームへ視線を走らせ、ドアが開きかけた車両へと向かう。

「止まれ!」...

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