CH328

レン視点

次に目が覚めたとき、彼の姿はなかった。だが、ついさっきまでそこにいた気配は感じられた。たぶん、廊下に出ただけだろう。そうであってほしいと願った。私は緊張に襲われ、辺りを見回した。静寂、匂い、見慣れない部屋……それらすべてが私の心をざわつかせ、落ち着かない気分にさせた。

ドアが開き、彼が入ってきた。前回と同じく全身黒の装いだが、今回のシャツには襟元に赤い縁取りがあしらわれている。私は安堵して力を抜いた。彼が近づいてきて、小さなサイドテーブルに食べ物の入った袋を置く。その表情は真剣だったが、眼差しには優しさが宿っていた。

「不安にさせてすまない。まだ眠っていると思っていたんだ」彼は...

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