CH98

タロフ

私はあえて彼女を押さえつけようとはしなかった。罪人が罰から逃れようともがく様を眺めるほうが、よほど愉悦を感じるからだ。彼女が悲鳴を上げ、身をかわそうとするその姿は、遥か昔の、もっと単純明快だった時代を思い出させた。私とパイラがまだ駆け回り、竜の王国を築き上げ、人間たちとの絆を紡いでいたあの頃を。

天界の住人も人間も、最期には皆こうなる傾向がある。恐怖に戦き、絶望に暮れるのだ。

「やめて! 来ないで!」

アリは身をかわそうとしたが、無駄だった。闇の化身が彼女の上に崩れ落ちるように襲いかかる。私の断罪から逃れられるとでも思っていたのだろうか。

吐き気を催すような破砕音と共に、その...

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