第104章 人を養う感じは良い

渡辺家の玄関先に、高橋風が果物の入った袋を提げてやって来た。

「鈴木さん、お宅の犬はたいしたもんだね! うちの二匹のシェパードはどっちも軍用犬の子孫なのに、二匹がかりで噛みつかれて身動きできなくさせられるなんて」

高橋風は高橋二郎の息子で、今朝の二匹の犬の飼い主である。

今、彼の家の犬たちはまだトラウマを抱えている。頭や体には傷が残っていた。

「どうだい、お宅のその犬、売ってくれないか? 二万でどうだ!」と高橋風は言った。

犬に二万というのは、決して安い値段ではない。

その辺で売られている犬なら、二千でも買い手がつかないだろう。

「売りません!」渡辺千咲が口を開いた。

トトち...

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