第二十一章

静まり返った車内に、実直そうな男の声が響いた。

空見灯は怪訝そうに尋ねた。

「誰? 桐原司?」

「そう、僕だよ。覚えてるかい?」桐原司の声は少し興奮気味だった。「空見さん、写真を見て一目惚れしたんだ。五年付き合った彼氏がいたそうだけど、気にしないよ。僕もバツイチで二回結婚してるし、僕たちお似合いだと思うんだ」

「結婚費用は僕が出すし、車も買ってあげる。本当に気に入ったんだ。ただ条件があってね、子供は少なくとも二人欲しい。僕は背が低いけど、君は背が高くて色白だから、次世代の遺伝子を改善したくて……」

「残念だが、その望みは叶わない」

桐谷憂が床に落ちたスマホを拾い上げ、氷のような声...

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