第二十二章

「どうしてですか?」空見灯は首を横に振った。「私は今の賃貸アパートで十分です。それに私たちは隠し婚なんですから、一緒に住む必要はありません。むしろ、そのほうがバレやすいのでは?」

本音を言えば、彼女は桐谷憂と一緒に住むなど真っ平御免だった。

あの夜、彼が自分を道端に置き去りにしたことを、彼女はまだ忘れていない。

運が良かったから助かったようなものの、一歩間違えば今頃どうなっていたか分からないのだ。

桐谷憂という男は気まぐれで、情緒が安定しない。空見灯はこの手の人間が最も苦手だし、極力関わりたくないのが本音だ。

桐谷憂は顎を上げ、傲慢そのものの表情で彼女を見下ろした。

「もし祖父が...

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