第二十七章

病院をあとにした空見灯は、念のため実家の隣人に電話を入れた。両親が間違いなく病院へ向かったという言質を取ると、彼女はタクシーでバスターミナルへ急ぎ、そこからさらに高速バスに揺られること二時間余り。ようやく目的の病院へと辿り着いた。

しかし病室に足を踏み入れた瞬間、目の前の光景に言葉を失った。

そこでは、花邑栞がベッドに横たわる中年の男に甲斐甲斐しく茶を運び、空見雄介はその傍らで卑屈な愛想笑いを浮かべている。あのゲーム三昧の空見睦月でさえ、男に団扇で風を送っている始末だ。

空見灯は呆然と立ち尽くした。

「お母さん……危篤じゃなかったの?」

ベッドの男は彼女を見るなり目を輝かせ、手招き...

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