第三十章

仕事を終えるなり、空見灯は病院へと急いだ。到着した時には、すでに観月蒼が待ち構えていた。

今日の彼は随分と控えめだ。黒のベンツに乗り、白のスーツに金縁眼鏡という出で立ちで、表情は厳めしい。まるでどこかの老教授といった風情だ。

空見灯が近づいてくるのを見ると、彼は咳払いをした。

「これから俺が何を言おうと、口を挟むなよ。いいな?」

「はい」

空見灯は何度も頷いた。

観月蒼に弟子がいることは周知の事実だが、彼は決して空見灯に治療の主導権を握らせない。連れて行くとしても、人目を盗んで針を打たせるだけだ。

ここ半年、観月蒼はほとんど自ら手を下さず、鍼灸や投薬はすべて空見灯に任せている。...

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