第三十四章

「成田院長、お祖父様の様子は?」

 空見灯は息を切らして戻ってきた。

 成田夏目は彼女の背後に視線をやり、尋ねた。

「観月さんは帰られたのですか?」

「はい、急遽海外へ行かれるそうで」

 空見灯はそう説明した。

 成田夏目は深く頷いた。さすがは高名な呪療師だ、海外にも治療を待つ患者がいるのだろう。まさか観月蒼が北極熊を見に行ったなどとは、夢にも思わなかった。

「お祖父様に何かあったのですか?」

 空見灯はおずおずと尋ねた。

 病室の桐谷大正を一瞥する。顔色は良く、呼吸も穏やかで、特段変わった様子はないように見える。

「いえ、桐谷会長の血圧は正常に戻ったのですが、頻繁に嗜眠...

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