第三十八章

「お金はいらないってば。車だけ貸してよ」

空見灯は、毎日往復の時間を無駄にしたくなかった。どうせ五十嵐悠真のプロジェクトさえ決まれば、少なくともそれなりの歩合が入る。

家を買うには足りないが、足にする車を一台買うくらいなら余裕だろう。

そう考えると、空見灯の気持ちも少し軽くなった。

先生から借りるか、桐谷憂から借りるか。

その二択なら、どちらを選ぶかはもう決まっているようなものだ。

自分の時間も貴重だ。いつまでも別荘の掃除ばかりしているわけにはいかない。

「いらないなんて通らないわよ。急に必要になるかもしれないでしょ? 貸してあげると思って受け取りなさい」

唐沢雪優はどうして...

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