第四十章

五十嵐悠真は不機嫌そうに彼女を見た。

「空見さんは君の命の恩人だぞ!」

「死ぬわけないじゃない! ただ寝不足で頭が痛いだけよ!」

 五十嵐澪は苛立ちを隠そうともせず、兄を睨みつけた。

「お兄ちゃんは一体どっちの味方なの!? こんな女と同じ控室にいるなんて耐えられない。早く追い出して!」

 言いながら、彼女はまた手近な物を投げつけようとする。

 空見灯はすでにドアのところまで歩いていた。師匠である観月蒼はかつて言っていた。「救うに値する人間と、そうでない人間がいる」と。

 他人の運命を尊重するのもまた美徳だ。無理に手を貸す必要はない。

「五十嵐社長、では私はこれで」

 彼女は...

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