第四十五章

会社に戻るものだと思っていた空見灯は、桐谷憂がハンドルを切って別荘地へ向かったことに意表を突かれた。

「待ってください、仕事に戻らないんですか?」空見灯は尋ねた。

「ああ」

桐谷憂は、彼女のまだ少し青白い横顔を一瞥した。痛み止めが効いてきたのか、苦痛は幾分和らいだようだが、顔色は依然として優れない。

今日は桜羽雪音のスケジュールも空いていることを思い出し、空見灯は頷いた。そして何かを思いついたように、桐谷憂の腕を軽く叩いた。

「桐谷社長、先にスーパーに寄ってください」

「スーパー?」

「はい、食べ物を買いに」

空っぽの冷蔵庫を思い出すと、空見灯は帰宅するのが億劫になった。

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