第五十四章

桐谷憂が家族と込み入った話をしたいのだと察し、空見灯は席を立った。

「お祖父様、薬膳の様子を見てまいります。観月さんが残してくださったレシピ、お体に良いそうですので」

その言葉に、中年の男が目を輝かせた。

「呪療師の観月蒼か? 伯父上が回復されたのも彼のおかげだと聞いている。頼めないだろうか?」

「駄目だ」

桐谷憂が一歩踏み出し、彼を遮った。

「妻の邪魔をしないでくれ。……灯、行っていいぞ」

空見灯は愛想笑いを浮かべ、厨房へと向かった。

桐谷憂の適応能力には驚かされる。ほんの一分前までは他人行儀だったのに、もう「灯」という呼び名が板についている。

家族の前で仲睦まじい夫婦を...

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